水素社会実現に向けた課題と展望

摘要

水素社会は現実のものになろうとしているが，水素エネルギーの導入には，温暖化対策やエネルギーセキュリティ確保に十分な量的寄与が出なくてはならない。大量水素時代に向けて，海外の多様な未利用エネルギーを水素に変換して日本に輸送するための技術開発も進められている。水素エネルギー導入に関する最近の技術革新とサプライチェーンのグローバル化を中心に，新たに提示した水素社会の定義を踏まえて，水素社会の実現に向けた課題と動向について解説した。 次世代エネルギー社会を考えるとき，量的寄与，時間スケール，空間スケールを踏まえて，グローバルな総合的視点が重要であること，技術革新により，多様性のある新たなべストミックスへの展開が不可欠であることを，水素エネルギー社会への展望を中心に述べた。水素社会は確実に近づいているが，いくら技術が高くても，高い技術を強い外交カードとして国際展開を図らなければ，世界的普及における主導権を外国に持って行かれた経験は，半導体，液晶ディスプレイ，太陽電池など，数多くある。そうならないような揺るぎのない国策を強く望みたい。%Synopsis The definition of hydrogen society and issues to be solved to realize an actual hydrogen society is discussed, where a significant quantitative contribution to the protection of global environment and energy security should be expected. The possible global scale CO_2-free hydrogen supply chain using overseas unused energy sources is also discussed to meet a large amount of hydrogen demand in the future.