蹴伸びフォームの解析

摘要

水泳において推進力を高めることで速く泳ぐことができるが，その分，抵抗が大きくなってしまう．そのため，より速く泳ぐには抵抗を少なくすることが重要である．水泳の基礎である蹴伸びは，特にスタート時やターン時後の蹴伸びはストロークやキックによる推進力を得られない局面であるため，抵抗軽減がより速く推進することに直結する．したがって，蹴伸びは初心者から熟練者に至るまで，共通した能力評価基準だと位置づけられている（山岸 2008）．蹴伸びは体を浮かすことや進みやすい姿勢を身につけるため，また，スタート及びターン後の水中でのグライド段階（蹴伸び）を作るために用いられる重要で基本的な動作である．そして，競泳競技において，泳ぎの向上に必要とされているのは推進力の増大と抵抗の差によって決定される．水泳中において水泳者に働く抵抗は，造波抵抗，圧力抵抗，摩擦抵抗が存在する．その中で圧力抵抗は大きな割合を占める．泳ぐ最中の動作により水の流れが乱れ，水泳者の身体周辺は圧力の高い部分と低い部分が生まれる．これにより圧力差が生じ，これが圧力抵抗となる．理想的な流線型をした物体であれば、流れは物体から剝離することなく前縁から後縁へと移動するため大きな圧力差は生じないといわれている．しかしながら，人体のように複雑な形状が水中を移動する際は，水平姿勢時においても，後頭部や臀部の下流で流れが剝離し負圧部分が生じてしまうとされている（安藤，他）．よって，より速く泳ぐには，抵抗を少なくすることが重要である．抵抗の少ない蹴伸びフォームを習得することは，競技成績向上と効率的な水泳のために非常に重要である．そこで，本研究では3D CADソフトを使用して，蹴伸びフォームを作成し，汎用熱流体解析ソフトSTAR-CCM+に取り込み，蹴伸びモデル周りの流れ解析を行った．研究目的としては，浮力，揚力がつり合っている条件で，抗力の少ない蹴伸びフォームを見つけることを目的とする．今回，揚力のつり合いがとれた値は150[N]である．また，水面では造波抵抗が働くため，水中で泳ぐことが抗力の低減につながる．そのため，本研究では水中で泳ぐことを仮定している．