高温酸素ポテンシャル勾配下におけるYb_2Si_2O_7中の酸素透過機構

摘要

SiC繊維強化SiC複合材料（SiC/SiC)は，軽量かつ耐熱性に優れることから，次世代航空機エンジンのホット セクション部材として検討されている.しかし，高温の酸素·水蒸気を含む燃焼環境下においては，SiC/SiCの酸 化とその後のSi(OH)_4の形成により，部材の著しい減肉 が進行する.そのため，SiC/SiCを上記部材に適用するた めには，耐環境性コーティング（EBC)が不可欠である. Yb_2Si_2O_7は耐減肉性に優れ，かつ，室温から溶融温度 2123Kまで相転移しないことに加えて，熱膨張係数が SiC/SiCに近いことから，EBC候補材の一つとして注目 されている.Yb_2Si_2O_7層に環境遮蔽性を付与するために は，少なくとも緻密質層でなければならず，その結果と して，この層は急峻な酸素ポテンシャル勾配（dμo)下に 曝されることになる.一般に，酸化物層を高温dμo下に 曝すと，酸化物を構成する酸化物イオンが表面から内方 向に，カチオンがその反対方向に相互拡散し，その結果 として，酸化物層の相分解と層構造の崩壊を招く恐れが ある.したがって，環境遮蔽性に優れ，かつ，丈夫なEBC にするためには，EBCを構成する酸化物層中の物質移動 機構を解明し制御することが極めて重要となる.しかし, 高温dμo下におけるYb_2Si_20_7層中の物質移動機構は明 らかではない.本研究では，Yb_2Si_20_7層のモデルとして， Yb_2Si_20_7焼結体から切り出したウェハを用いて，高温 dμo下における酸素透過試験を実施し，Yb_2Si_20_7中の物 質移動機構を検討した.