GAGG 粒子またはZnS:Ag 粒子を含有させた有機無機複合材料のシンチレーション特性の比較検討

摘要

シンチレーターには主に単結晶材料が用いられているが、有機物と無機蛍光体微粒子（特にZnS:Ag）との複合材料についても研究されており、例えばZnS:Ag 微粒子とエポキシ樹脂の複合材料などについて報告されている 。このような有機無機複合材料は製造コスト面で優位性があり、放射線計測の一部の用途には利用できる可能性があると期待される。本研究では、無機シンチレーターとアクリル樹脂の複合材料について検討した。アクリル樹脂は、ラジカル重合により樹脂を形成する点でエポキシ樹脂と異なり、低温での硬化性に優れている。また、紫外線による劣化がエポキシ樹脂よりも少ないとされ、長期使用の点で有利な可能性がある。これまでに我々はGAGG 粒子-アクリル有機無機複合材料を試作し、波高分布スペクトルにおいて~(137)Cs からのガンマ線の検出イベントが、ノイズレベルを大きく上回るレベルで得られることについて既に報告している 。本発表ではGAGG 粒子-アクリル有機無機複合材料のシンチレーション特性を、作製したZnS:Ag 粒子-アクリル有機無機複合材料と比較、評価した。Fig. 1 に用いた蛍光体粒子とフォトルミネッセンス (PL) スペクトルと、有機物媒体として利用した紫外硬化アクリル樹脂を蛍光体粒子を含有させずに硬化させたサンプルの透過スペクトルを比較した結果を示す。Fig. 1 より、GAGG 粒子、ZnS:Ag 粒子共にアクリル樹脂の透過スペクトルに対し、十分に発光が取り出せる波長で発光していることが確認できる。GAGG 粒子-アクリル有機無機複合材料の~(137)Cs からのガンマ線照射時の発光量は数千photons/MeV 程度でBGO よりは高かったが、ZnS:Ag 粒子-アクリル有機無機複合材料よりは低かった。シンチレーション減衰時定数の観点からは、GAGG 粒子-アクリル有機無機複合材料の方が優位だと考えられる。詳細は当日報告する。