MSE法による疲労条件下での自動車用構造材料SPFC780Y溶接部の材料特性の変化および低侵襲疲労余寿命予測

摘要

MSE (Micro Slurry-jet Erosion)試験法は、微粒子と水を混合したスラリーをノズルより圧縮空気にて霧状に髙速噴射し、対象表面に衝突させてエロージョン摩耗を発生させる技術である.これは、対象表面を微視的に研削することと同等である。すなわち、MSE試験により、対象表面の研削抵抗を求めることで、測定部分の残留強度を測定できると考えられる。元来MSE試験法は、薄膜の強度評価のための試験であり、MSE試験による表面研削量は数μm～数十μm程度とされているため、材料をほぼ非破壊的、かつ低侵襲に検査することが可能である。著者らの一部は、これまでMSE試験を用いてNi基超合金のクリープ損傷を測定することにより、MSE試験法を用いたクリーブ余寿命予測法の有用性について報告している。これらの研究結果をもとにして、MSE試験法を疲労余寿命予測法の構築へ発展させるため、自動車用加工性冷間圧延高張力鋼SPFC780Y溶接材について、途中止め平面曲げ疲労試験片に対しMSE試験を実施してきた。先行研究おいて、SPFC780Y溶接材は操返し負荷によりMSE研削抵抗は増加し、最終破断領域近傍で低下することを示した。これは、疲労によるひずみ硬化が生じていることを示唆している。本研究では、途中止めMSE試験の回数を增やすとともに、試験片にひずみゲージ取り付けた状態で疲労試験をすることで、試験片の変形抵抗の時系列変化を測定する方法を考案し、疲労によるひずみ硬化の発現の検証を行った。また、これらの結果から、MSE試験法を用いた疲労余寿命予測法の妥当性について検討を行った。