微分干渉照明を用いた面外せh断歪みの計測

摘要

近年，様々な構造物に積層複合材料が用いられている．中でも炭素繊維を用いたCFRP薄板は軽量化が必要な構造材に多く使用されつつある．航空機では，翼や胴体など主要な構造材に使用されており，CFRP中に発生する層間剥離や内部亀裂をいち早く検出することが安全維持のためにも欠かす事ができない．そのため，数多くの非破壊検査手法が提案されている．画像計測技術をもちいたレーザシェアログラフィ法は全視野の検査が素早く行えるため，実際に航空機の部材の点検に使用されている．［1，2］レーザシェアログラフィ法は，測定対象にストレスを加え欠陥近傍で発生する面外変位を検出するもので，レーザの干渉により波長程度の変位の分布を一括計測する手法である．一方，数多くの数値実験にもとづいたガイド波の散乱や，特定の周波数に対する共鳴に関する研究や，それらに基づく亀裂や層間剥離の検出が試みられてきた．［3］本研究で用いているA0モードラム波は分散性の波であり，周波数が低くなると位相速度が周波数と板の厚さの積の平方根に比例して変化する特長がある．そのため，層間剥離が発生し，見かけ上板厚が減少すると剥離領域における位相速度が低下する．その結果，剥離領域においてトラップモード波が発生することが観測されている．[4]トラップモード波とは，地震学においてよく知られている現象で，断層被砕帯では，周囲に比べて低速度であることから，断層破砕帯内を伝わる特殊な波のことである．そこで，本研究では，レーザシェアログラフィ法で用いられる位相シフト光学系を用いて微分干渉照明を実現し，対象表面の局所的な面外せh断歪みの計測を試みている．