多目的最適化による小弦節比翼列ディフューザの設計（最適化翼の実験的検証）

摘要

本研究では，多目的最適化設計を用いて遠心圧縮機小弦節比翼列ディフューザ（LSD：Low Solidity circular cascade Diffuser）の最適化設計を試みた．妹尾らによって提案されたLSDは，スロート部がないため高流量側でチョークを生じず，低流量側では側壁に生じる二次流れ効果によってLSD負圧面側の低エネルギ流体が吸い出され，負圧面剥離が抑制されて広い作動流量範囲を持つという特徴を有する．要求の高い効率改善および運転流量範囲拡大の同時改善にLSDは有効なデバイスであるが，低流量域で失速を抑制する二次流れが有効に作用する形状については知見が少なく最適化するための設計資料が少ない．二次流れは半径内向き流れでもあるので，過大な二次流れは主流の減速を妨げ，ディフューザの圧力回復を損ねることも考慮すべきである．すなわち，主流の減速を妨げない程度に適正な二次流れを生じるLSD翼を見出す必要がある．そこで本研究では，LSDについて多目的最適化設計手法を適用し，高い静圧回復率と広い運転流量範囲をもつディフューザの開発を行う．LSDの翼先端に隙間を設けて二次流れを安定的に生じるように工夫することで耐失速性を増し，翼負荷を最大限に得られるような形状を見出すことを試みた．