分離反復連成解法を用いた応力拡大係数に基づく三次元疲労き裂進展シミュレーション

摘要

大規模な三次元の解析モデルを用いた疲労き裂進展シミュレーションは，実機の構造健全性を評価する手段の一つとして有効である．大規模複雑形状構造物の破壊力学解析では，解析モデルの形状の複雑さの表現とき裂先端近傍の応力特異場の再現という二つの理由から，有限要素モデル作成時のメッシュ生成およびき裂進展に伴うメッシュ再生成が困難になる．また，き裂先端近傍で発現する非弾性現象を考慮する場合は，大規模な解析モデル全体で増分解析やNewton–Raphson 解析を行う必要があり，計算時間が増大してしまう．そこで，我々は図1 のように解析モデルを二つの領域に分割し，それぞれを独立に解析する手法を研究している．ズーミング法や重合メッシュ法と違い，本手法ではメッシュが重なり合わないように分割する．このとき，き裂を含む領域Ω_L は問題規模が小さく形状が単純であるため，高度な構成則やクライテリオンを適用してもメッシュや計算時間の問題が起こりにくい．一方，き裂を含まない領域Ω_G は問題規模が大きく複雑形状である代わり，き裂を含まないために線形弾性体や非線形性の小さい非弾性体としてのモデリングが可能である．また，それぞれの領域をただ独立に解析するだけでは領域境界Γ上の変位や応力の連続性が満たされないため，それぞれの領域に仮の強制変位境界条件u_Γ，荷重境界条件f_Γ を付与して解析を繰り返し行い，それらの境界条件を次々と更新することで最終的な有限要素解を得る．本報告では，応力拡大係数に基づく弾性疲労き裂進展解析を三次元有限要素モデルを用いて行い，その損得を議論する．