Ti-50.3atNi 形状記憶合金の変形挙動に及ぼす温度の影響

摘要

形状記憶合金(Shape memory alloy, 以下SMA)は負荷によって生じた変形をある条件の下(一般的には加熱)で元の形状に戻すことができる形状記憶効果を持つ特異な材料である．この形状記憶効果はマルテンサイト相(以下M 相)からオーステナイト相(以下A 相)にマルテンサイト逆変態することによって起こる形状回復効果であり，M 相状態のSMA は形状回復を行うために逆変態終了温度A_f点以上への加熱を要するが，A_f点以上のA 相が安定な温度下では，SMA は除荷のみで形状が回復する超弾性変形特性を示す．このようにSMA は温度変化により相状態が変化し，それに伴い変形挙動が非常に大きく変化する．さらに，SMA の変形挙動は同一の相状態の範囲内であっても環境温度の変化に伴って通常の構造用材料に比べて大きく変化する．このため，SMA を機械要素へ応用するためには変形挙動に及ぼす温度の影響を明らかにすることは非常に重要である．そこで本研究では673K，723K および773K で熱処理を施した試験片を用いて様々な環境温度下で引張負荷－除荷試験を行い，SMA の変形挙動に及ぼす環境温度および熱処理温度の影響について調べた．