有明海における密度成層と貧酸素水塊の経年変化

摘要

近年，有明海では貧酸素水塊の発生を中心とした水環境の悪化が生じている.その貧酸素水塊の発生要因の一つに密度成層の強化が挙げられ，これまで密度成層の経年変化に関する研究が多く行われてきた.既往研究として，松川ら（2014)は，水質の長期変化に三次関数を当てはめることで湾奥部で諫早湾潮受け堤防建設後に密度成層が強化されたと結論している.一方で，柳·下村(2004)は，1990年から2000年の間の成層度の時間·空間変動特性を調べ，有明海の成層度は減少してきたことを示している.以上のように有明海の密度成層の経年変化にっいては共通の認識を持つには至っていない.この原因として，各々の研究が必ずしも長期変化を検証するのに十分な解析期間を対象としていないことや，潮汐，波浪や河川流量など外力の長期変化と密度成層との定量的な関連性については調べられていないことが挙げられる.以上のような背景のもと，本研究では長期間のデータ解析を行うことで，有明海の密度成層·貧酸素水塊の変化要因を検討した.