南極氷床表面の夏の昇華

摘要

温暖化の進行に伴って南極氷床の質量収支がマイナス、すなわち、海水準の上昇に働いていると認識されるようになった（IPCC レポート）。南極氷床の質量収支にとって、質量を増加させる要因は降雪と表面着霜（deposition）である。大気は質量を維持するための重要な役割を持っている。一方で、昇華（sublimation）による質量損失についても以前から研究されている（King et al. 2001, Fujii et al. 1979, Kamedaet al., 1997 など）。最近、我々は昭和基地近傍の氷床上で特徴的な南測を実施し、年間降水量の5％程度が失われていると評価した（小西・平沢 2019 春大会）。また、数年前から南極氷床上に展開しているAWS に搭載した超音波積雪深計によって、夏季に雪面レベルの低下が起こっていることが分かり（平沢ほか2021）、これが表面昇華を反映していると考えられた。