長大トンネル建設工事中の無線LANを用いた仮設保安連絡回線の構成

摘要

東北新幹線(八戸·新青森間)は、鉄道トンネルとして国内2番目に長い八甲田トンネル(約26km)などの長大トンネルを含め、全体の62%をトンネルが占めている。これら長大トンネル内における工事中の安全対策は当然であるが、緊急時対応として、トンネル内と外部間の連絡設備は必要不可欠である。連絡設備としては、本設の沿線電話機や沿線携帯無線などがあるが、使用できる時期は軌道工事が終わり、電気工事も終盤に差し掛かった頃になってしまい、工事中の連絡設備として間に合わない。そこで、東北新幹線(盛岡·八戸間)では、仮設の通信ケーブルに音声呼出電話機を500m間隔で設置する構成としていた。ただし、公衆回線(NTT回線等)と接続できないため、トンネル出入口の人間を介して警察·救急·建設事務所等への連絡を行う体制としたため、常時、人員を配置する必要があり、緊急時の連絡が間接的でスムーズな連絡が困難になるという問題点があった。また、常時の連絡に使用する場合、多数の工事関係者がいる中で、相手を特定するために名前を呼称したり、電話機の近傍にいない場合には伝言を頼まざるをえないなどの煩雑さがあった。そこで、八甲田トンネルでは、人間を介さずに公衆回線に接続でき、設置が容易で使い勝手の向上が見込める無線方式を検討した。