ＡＣドライブ装置のＥＯＬ対策（制御回路セル化によるサステナブル性向上）

摘要

鉄鋼プラントの圧延設備では交流電動機を可変速制御するインバータドライブ装置が早くから適用され、生産性向上に貢献してきた。これは、鉄鋼製品の高品質化・歩留り向上やプロセスの安定操業といったユーザニーズと、１９８０年代以降急速に発展したパワーエレクトロニクス技術、マイクロプロセッサ技術、ベクトル制御等の高度制御技術といった技術シーズが相まって進められた時代背景による動向でもあった。このように、圧延設備の駆動系は電動機の交流化と共に高度なエレクトロニクス化が進められてきたが、導入から四半世紀を過ぎる設備も存在するようになり、インバータドライブ装置を最新式の装置へと再更新するケースもある。これは圧延設備の能力増強を目的とすることもあるが、ほとhどが当初導入したインバータドライブ装置を構成するパワー半導体や各種基板の搭載部品がＥＯＬ（End of life：生産終了）となり、装置メーカとしての保守サービスを停止せざるを得なくなることをきっかけとしている。これまで弊社は、技術進化が早いパワー半導体はＥＯＬの影響を受けやすいため、複数のサプライヤによる安定な供給源と様々な用途に適用される高い品質が実現される汎用ＩＧＢＴを１９９０年代より適用し、製品ライフサイクルの長期化を図ることで対策してきた。しかし、近年の基板搭載電子部品のＥＯＬ短期化により、基板としての供給寿命が５年を下回るケースも発生している。図1 に電子部品の用途別構成比を示す。鉄鋼プラントを含む長期稼動を求められる産業機械の用途割合が数パーセント以下である一方、スマートフォンに代表される通信機器の用途割合が支配的であり電子部品メーカにおける事業の選択と集中が、製品ライフサイクルが短い製品へ向かっていることが分かる。弊社は、今後もこの状況は継続し、製品ライフサイクルが長いインバータドライブ装置におけるＥＯＬの影響はますます大きくなると考えている。その結果、鉄鋼ユーザの設備保守・維持に大きなリスクを作りこむだけでなく、弊社を含む装置メーカにおいても影響回避のための開発投資が組織を疲弊させ、事業継続を阻害するリスクにもなりえると予測する。本論文ではインバータドライブ装置のＥＯＬ対策について、弊社の主機用インバータドライブ装置における取組みを中心に述べる。