熱圧縮ポリプロピレンの2軸引張り試験による降伏曲面の力学異方性評価

摘要

高分子材料は金属に代わる構造材料として注目されており，成形過程によつて材料組織および機械的特性が変化し力学特性に影響を与えることが知られている.射出成形などにより発生する力学異方性もその一つであり，材料における荷重方向に対する強度に影響を及ぼす.そのため，材料の力学異方性を考慮した降伏挙動を評価することによつて材料の信頼性も高まると同時に安全性の向上も図ることができる.強度評価などのCAE解析においては，材料の降伏挙動の評価に降伏曲面を利用することが多い.主応力空間において降伏曲面は降伏関数によって表され，一般的に用いられる降伏関数の例としてはMisesの降伏関数が代表的である.しかし，等方性材料を想定したMisesの降伏関数は異方性材料に適していない.また，一般的なCAE解析に用いられる材料モデルは，古典的な金属材料のための塑性論の分野で発展してきたものであり，特異な力学挙動を示す高分子材料に適用できるかには疑問が残る.