アナモックス細菌の窒素·酸素同位体効果の解析

摘要

アナモックス細菌は海洋や沿岸域などの幅広い水圏環境で検出され、脱窒反応と共に窒素除去へ寄与している。アナモッタスおよび脱窒プロセスの寄与推定のために、実環境中の窒素化合物の濃度と、物質の起源やプロセスの情報を保持している安定同位体比(δ)を測定が行われてきた。この推定には窒素循環に関わる各プロセスの固有の同位体効果ε(反応における安定同位体比(δ)の変化量)が不可欠である。脱窒細菌やアンモニア酸化細菌に関しては、すでに比較的多くのデータが集積され、菌種間の比較がなされている。しかしながら、アナモッタス細菌は難培養性細菌であり、淡水性の"Ca. Kuenenia stuttgartiensis"の窒素同位体効果（~(15)ε)が唯一報告されているだけで、酸素同位体効果(~(18)ε)に関しては全く解析されていない。酸素同位体効果は、窒素のみでは追跡できない反応の情報を得るために不可欠である。そこで本研究では、著者らの研究室で高度集積培養に成功している3種類のアナモックス細菌（海洋性の"Ca.Scalindua japonica",淡水性の"Ca. Jettenia caeni"および"Ca. Brocadia sinica")の窒素および酸素同位体効果を求め、細菌間の比較を行うとともに、生理学的特性と関連付けて議論した。