年間実負荷に基づく地域冷暖房方式と個別分散空調方式のエネルギー効率比較

摘要

本報ではDHCによる集中熱源方式を採用している建物において、1年間分のBEMSデータを解析することにより、空調機毎の熱使用量の実態を明らかにした。また、同条件にてVRFを採用した場合を想定した設計を行ない、実測より得られたVRFの実運用時平均部分負荷特性を用いて、年間の消費エネルギーを算出した。両者の一次消費エネルギー算出結果を用いて、DHC及びVRFのエネルギー効率の比較を行なった。その結果、DHCの方がVRFよりも概ねエネルギー効率が優位であることが確認された。特に暖房時においてはVRFの効率が頭著に低下する極小負荷運転の割合が多く、消費エネルギーの差は頭著であることが確認された。しかし、冷房時においては熱負荷の状態によっては、VRFの効率が向上する傾向が確認され、熱負荷の高いゾーンではDHCのCOPO.8と仮定した条件よりも上回ることが確認された。DHCにおいては未だCOPO.8を下回る施設も存在しており、プラントCOPをより高めていくことが今後の課題である。またVRFに関しては、設備容量の冗長性を定量的に評価することが必要であると考えられ、部分負荷特性に重点をおいた高効率空調機器の開発及び暖房時や二次側空調設備の高効率化が技術的課題として挙げられる。