飛騨高山冷温帯落葉広葉樹林で観測された炭素収支の年々変動および長期トレンド

摘要

全球規模の炭素循環において、陸域生態系の役割は重要である。しかし、大気－陸域生態系間の炭素収支の変動要因については十分に理解されていない。今後、さらに地球温暖化が進行し、大気中CO_2 濃度が増加した場合、温暖化に伴う生長季節の長期化やCO_2 濃度増加に伴う施肥効果の増大は、CO_2 吸収を強めるように働くが、温暖化に伴う呼吸・分解活動の活発化はCO_2放出の増大に寄与する。また、極端気象の頻出化は、陸域生態系を攪乱し、炭素収支に影響を及ぼしうる。このように炭素収支の将来予測には不確定性が大きく、気候変動予測の精度向上や効果的な温暖化対策の策定の障害となっている。この問題を解決するために、森林をはじめとする陸域生態系におけるCO_2 フラックスの長期観測が有効であり、変動要因の解明や地球温暖化・CO_2 濃度増加による炭素収支への影響の早期検出が試みられている。しかし、20 年以上にわたる長期観測例は少ない。本研究では、1993 年から岐阜県高山市の冷温帯落葉樹林観測サイト（TKY、36o08’N, 137°25’E, 1420 m）において実施している大気－生態系間CO_2 フラックス観測で得られたデータを解析し、炭素収支の年々変動及び長期トレンドと各種環境要因との関係を調べたので、結果を報告する。