洋上風力発電向け多回線直流送電の基本構成と直流線路事故時の保護方式

摘要

本論文では，直流系統の事故回線の選択遮断と健全回線の送電継続を直流遮断器を用いずに行うことを目的とし，ダイオードを用いた多回線直流系統と，その直流線路事故の保護方式を提案した。提案構成では，回線間を接続する直流母線部にダイオードを用いることにより，直流線路事故時に事故回線のみを速やかに除去し，健全回線の送電を継続できることを確認した。また，事故時に順変換器を構成するDSCC変換器をゲートプロックするのではなく，ゼロ電圧出力を用いた保護方式（上下アーム短絡，および下アーム短絡）を適用することにより，対称単極構成を採用しながらも直流一線地絡事故時の非地絡極の線路で発生する電圧上昇を抑制できることを確認した。また，直流一線事故除去時に順変換器のアームを流れる事故電流は，線路の対地静電容量に依存し，対地静電容量が小さい場合は上下アーム短絡による保護が有効であり，対地静電容量が大きい場合は下アーム短絡による保護が有効であることを示した。