tDCSにおける脳深部領域の電界評価

摘要

近年、医療分野において脳組織を非侵襲的に刺激することに関心が高まっている.その方法の一つとしてtDCS(経頭蓋直流電気刺激法）がある.tDCSは頭部に貼付した電極間に微弱な電流を流すことによって神経調節をもたらす方法であり，うつ病や脳卒中のリハビリ治療に有効とされている.また，tDCSでは電極直下において電流が最大となるため，大脳皮質での変調効果が支配的になると推察される.しかしながら，電流が電極間に拡散するため，皮質下のみならずより深い脳領域も標的として含まれる可能性があり，深部刺激などへの適用も検討されている.本稿では，tDCSにおける脳深部領域の電界分布を調査するために個人の脳領域から標準的な脳領域へ計算された電界を投影するレジストレーションを用いて，グループレベルでの電界分布および強度を計算した.その結果，被験者間のばらつきにも関わらず，グループレベルでは脳深部領域の一部において，大脳皮質における最大電界値の76%電界強度が生じた.この研究によって，tDCSは大脳皮質だけでなく，いくつかの脳深部領域への直接的な調節も可能であることが示唆される.