顔面皮膚温度及び顔面のLab 色空間情報を用いた生理心理学的ROI の長期変動評価

摘要

近年， 日々の健康管理を目的とした遠隔的に生体情報を測定する技術が注目されている[1]。日常の中で他者の顔色から健康状態を主観的に判断する場面がある。生理心理学的に，顔色の変化は自律神経系の作用による顔面の皮膚血管の拡張・縮小によって引き起こされる。廣田らは， 緊張や喜び，不安などの情動的刺激や運動により顔色が変化する可能性を示唆しており[2]，日々の健康状態と顔色の因果関係によって自律神経系活動の類推が可能だと考えられる。一方で，顔面皮膚温度は自律神経系活動による皮膚血流量の変化に関連した生理指標であり，赤外線サーモグラフィカメラを用いた遠隔計測が可能である。先行研究において鼻部，頬部，眼窩上部，眼窩下部，額部，顎部等の顔面部位ごとの皮膚温度変動と感情に関する生理心理状態に因果関係があることが明らかとなっている[3]。また，顔面皮膚温度及び顔色を用いた生理心理学的ROI の長期変動評価[4]では， 顔面画像上に生理心理学的に関心のある領域（Psychophysiological Region Of Interest，以下PP-ROI と略記）を定義し，PP-ROI のRGB 値長期変動評価を行った結果，眼窩部の温度値及びR 値が生理心理状態の長期変動に関する部位であることが示唆された。しかし，RGB 色空間はディスプレイへの出力を想定したカラーモデルであるため，色値の変化に対する人間の感じ方が異なる。他者の顔色から健康状態を主観的に判断する場面があることを考慮すると，色値の変化に対する知覚的均等性を考慮した色空間に基づく評価が必要だと考えられる。本研究では，PPROIにおける顔面皮膚温度及び知覚的均等性を持つLab 色空間情報を用いた長期変動評価を行った。