洪水予測手法（DIEX-Flood）の改良と鬼怒川水位縦断分布解析への適用

摘要

2018年西日本豪雨では，数日間にわたる記録的な豪雨により岡山県・広島県・愛媛県等を中心に洪水・土砂災害が発生し，平成最悪の人的被害となった．この豪雨は気候変動の影響を受けたものと認定され，今後も気候変動の進展に伴う豪雨災害の発生が益々懸念される．水害に対する重要なソフト対策の一つとして，河川における高密度の水位観測ネットワークの構築と高精度でロバストな洪水予測システムの開発・整備が挙げられる．前者に関しては安価な「危機管理型水位計」の導入が2017年に決まり，現在，全国的に設置されている．後者に関しては，粒子フィルタ1）に基づく洪水予測システムが整備されつつあるが，多地点の水位データ同化を行うと計算負荷が大きいという課題に直面する．一方，著者らは，多地点水位観測値のデータ同化を容易に行うことが可能な洪水予測手法（DIEX-Flood）を開発し，江戸川における洪水予測シミュレーションに適用し，その基本的な有効性を検証した2）．このDIEX-Floodを他の河川や洪水イベントへ適用したところ，水位のデータ同化に伴う流量計算値の不自然な増減や計算結果の不安定化・発散という事象が確認された．