マイクロ波•ミリ波回路システムにおいて,信号の合成/分配を行う3ポートの電力分配器としてE. J. Wilkinsonにより提案されたウィルキンソン電力分配器[1]がよく用いられる.近年,IoTや無線LANのような無線情報通信の多様化に伴い,各種マイクロ波デバイスには小型化かつ高性能化(広帯域化,マルチバンド化など)が求められている.これらの要求から研究開発が盛hに行われており,マルチバンド動作のウィルキンソン電力分配器[2][3]や,動作周波数帯を制限するバンドパスフィルタの特性を持つ帯域通過型電力分配器[4][5]がいくつか提案されている.文献[2][4]の回路は,伝送線路を基本回路構成とし分布定数理論に基づいて設計されているため,UHF帯以下の比較的低い周波数での設計においては,MICやMMICなどの集積回路上で占有面積の大型化が問題となる.これに対して文献[3][5]では,この問題を解決するために伝送線路をП型/T型回路で置換した集中定数素子構成のウィルキンソン電力分配器に周波数変換を施すことで,回路の占有面積の低減を図っているが,その周波数特性は低域/高域共に狭帯域となる.同様に,П型/T型回路構成の単一周波数動作の電力分配器は,原型の電力分配器に比べて周波数特性は狭帯域となつている.以上のことよりП型/T型回路構成の電力分配器では小型化と広帯域化の両立が困難であると考えられる.そこで筆者らが先に報告しているLCはしご形回路構成の集中定数素子を用いたウィルキンソン電力分配器において狭帯域特性の改善が可能となることを報告した.さらにLCはしご形回路構成のウィルキンソン電力分配器の各素子に周波数変換を施し,2周波数動作として低域/高域が12%程度で動作可能であること報告している.
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