熱力学平衡計算を用いた除染廃棄物中のストロンチウムの熱処理時の挙動推定

摘要

放射性ストロンチウム（~（90）Sr,以下r-Sr)は、放射性セシウム(~(137)Cs,~(134)Cs，以下r-Cs)に次いで環境影響が懸念される樹重であるが、その廃棄物処理における挙動はr-Csに比べて情報が少ない。これまでに一般廃棄物および災害廃棄物（除染廃棄物を含む）の焼却残渣のr-Sr濃度(1,2)と~(88)Sr(Sr)の溶出特性(3,4)およびSrの主灰·飛灰間分配特性(5)が報告されている。除染廃棄物専焼時の飛灰へのSrの分配率は20～30%であり、アルカリ金属に比べると飛灰分配率は低いが、Si, Alと比べると飛灰分配率が高い傾向が見られた。Sr溶出率（第13号試験に準じて測定）は、主灰で1%以下、一部の飛灰で約20%(3,4)であった。同じアルカリ土類元素であるカルシウム(Ca)の化合物形態は、一般廃棄物の主灰ではCaO，CaCO_3,Ca(OH)_2,長石·メリライト等のケイ酸塩鉱物およびCaSO_4、飛灰ではそれらに合わせて消石灰由来と思われるCaOHClが同定されており(6，7)、 CaとSrの類似性から、飛灰のSrの水溶性成分としてSr(OH)_2, SrCO_3, SiOHCl,SrSO_4等が生成する可能性が考えられる。一方、除染廃棄物の焼却主灰では非晶質相?長石?がCaを含む成分として同定されているが(5,8)、飛灰に関しては測定がないため除染廃棄物の飛灰から溶出するSrが何によるものか明らかではない。本研究では、除染廃棄物に含まれるr-Srの焼却時の挙動把握のため、r-Srとほぼ同じ性質を持つ安定Srの熱力学データを用いて、ストーカ炉における除染廃棄物の焼却時の変化にっいてマルチゾーン平衡計算を用いて検討した。