輻輳海域における船舶遭遇頻度の推定手法の開発

摘要

船舶航行の安全性に関して，従来から船舶交通量や衝突事故発生場所等の様々な要素から評価が行われている．船舶の遭遇や見合い関係も，航行安全の重要な一評価要素であり，藤井らは1970 年代に，幾何学的な船舶遭遇頻度の推定式を用いて見合い関係と遭遇の発生を評価する方法を提案した．更にその後も，見合い関係を考慮した幾何学的遭遇頻度の推定式が複数提案されている．既存の推定式では，一定の出会角で遭遇する同航または反航の関係にある船舶同士の遭遇頻度を計算することが可能である．一方，実際の海域は様々な進路で航行する船舶で輻輳しており，このような海域において船舶遭遇頻度を一度に同時に計算することは困難であった．更に，船舶の通航位置の分布は海域等により異なり，分布形状を考慮して計算することも難題であった．本研究では，船舶が様々な出会角で遭遇する輻輳海域における船舶遭遇頻度による航行安全評価を行うことを目指し，既存の推定式の難点に着目した船舶遭遇頻度の推定手法を提案する．また，本手法を東京湾口のAIS 搭載船舶に適用した結果について，船舶遭遇頻度の高低や見合い関係別の船舶の遭遇状況の解析結果を報告する．