MLDシステム表現を用いた車線変更モデルの提案

摘要

交通渋滞問題は社会的損失を与えるだけでなく, 環境汚染にもつながるため, 解決が望まれる重要な課題である(1). これを解決するために交通流シミュレータが有効とされており，渋滞発生メカニズムの解明や, 交通施策の事前検証の効率化が期待される.交通流シミュレーションに利用されるモデルは, マクロモデルとミクロモデルに大別できる. マクロモデル(2)は,交通流を流体として扱い, 連続の式で表現する. これに対し, ミクロモデルは, 車両1 台毎の挙動の相互作用を考慮して交通流を再現する. そのため, 各車両の挙動が深く関係する渋滞現象を解析するにはミクロモデルが適している. ミクロモデルの代表的なものとしては, 最適速度モデルとセルオートマトンモデルが挙げられる(2)～ (4). 最適速度モデルとは, 先行車との車間距離に基づいて, 各車両の追従走行が定められたモデルである. セルオートマトンモデルとは, 道路を連続するセルの集まりとして定義し, セル間を車両が遷移することにより交通流を表現するモデルである. 文献(5)では，MLD システム(MixedLogical Dynamical System) 表現を用いた交通流モデルを構築し, ボトルネック区間内での反応遅れ時間により発生する渋滞現象が再現されている. しかし, 従来のモデルでは車線変更の挙動が離散的かつ簡易であるため, この挙動が及ぼす渋滞現象への影響は十分に考慮されておらず, 車線変更が渋滞発生の要因になることは明らかにされていない.