平成27年9月関東?東北豪雨による北上川水系 二次支川三迫川での災害発生状況の考察

摘要

平成27年9月関東?東北豪雨では，住宅被害が全壊?半壊?床上浸水等，約1万棟に上り，8名の犠牲者が発生した1)2)．本研究対象である北上川水系二次支川三迫川を含む北上川水系一次迫川水系でも，複数の箇所で破堤や浸水等の被害が生じている3)．また，犠牲者8名のうち，2名の犠牲者は，迫川水系で被災しており，東北地方での犠牲者は，迫川水系だけである．この迫川水系での2名の犠牲者は，異なる場所ではあるが，いずれも自動車運転中に被災している．1人は二次支川熊川において被災している．報道によれば，落橋した橋を，日の出前の午前4時頃に通過し，車ごと川に落下し，電話で救助を求めたが，救助隊が到着した際には更に下流に流され，溺死している．災害発生の翌々日の筆者らの現地調査では，洪水痕跡から，当時の被災地点周辺は浸水しており，道路上も冠水していることが確認された．このため，日の出前の暗がりであることからも落橋を運転者が認識することは困難だったと考えられる．また，落橋は洪水流による基礎の洗掘と見られ，橋脚基礎が狭窄部を形成しており，その下流側は，河道改修によって拡幅され，上流部は下流に比べて流下能力が小さい河道断面であった．