交番磁気力顕微鏡を用いた強い直流磁場計測に向けた高磁化率Fe基常磁性およびAg-Co超常磁性探針の開発

摘要

我々は，試料表面近傍での静磁場計測を可能にする高空間分解能な交番磁気力顕微鏡(A-MFM)を開発した本手法では，ハード磁性試料の直流磁場計測に対しては，ソフト磁性探針に交流磁場を印加し，探針磁化を周期的に反転させて探針試料間に交番磁気力を発生させ，この交番磁気力が誘起する探針振動の周波数変調現象を利用する.しかしながら，永久磁石等の極めて強い磁場を発生する試料の評価においては，1)ソフト磁性探針が試料表面に磁気吸着してしまう，2)ソフト磁性探針の磁化が試料からの直流磁場で飽和してしまい周波数変調現象が生じない，などの問題が発生する.これに対し，磁気モーメントがソフト磁性材料よりも小さく，磁化が飽和しない，高い磁化率を有する，などの特徴を有する常磁性および超常磁性材料を用いた探針が，強磁場画像化に有望であると考えられる.また，磁化が磁場に比例しかつ残留磁化がゼロであるこれら採針は，直流磁場印加機構と組み合わせることで，試料直流磁場の絶対値計測に用いることもできる.本研究では，常磁性および超常磁性薄膜において磁化率を増大させるための材料探査並びに作製プロセスの検討を行い，上記の用途に適した高感度探針を開発することを目的とした.