10ヶ年の生存追跡調査と室温予測に基づく寒冷曝露の循環器疾患死亡検証

摘要

本国における循環器疾患は我が国の主要な死因の一つで、死亡者数の推移を見てみると、循環器疾患による死亡者数は平成7年に比べて増加傾向にある(図1)。健康日本21では、血圧の上昇と循環器疾患による死亡の関連性を示した上で、高血圧が循環器疾患の危険因子となることが示されている文2)。そのような中、建築分野からの貢献も期待されており、WHOの住まいと健康に関するガイドライン文3)においても、温暖な住宅に住むことが推奨されている。また、室内での寒冷曝露が高血圧症状に及ぼす影響についても知見が集積されつつあり、Umishioら文4)の研究によると、起床時血圧と室温は3次曲線の関係にあり、少なくとも5～20°Cの室温範囲においては室温低下による血圧上昇の傾向があること、高齢者ほど室温低下が血圧上昇に及ぼす影響が拡大するといった結果が示されており、住宅を温暖に保つことで血圧の上昇を抑制できる可能性が示唆されている。このように、室內温熱環境と血圧との短期的な関連が明らかになりつつある一方で、居住者の生存と死因について10年間追跡し温熱環境による影響を解析したコホート研究は見受けられない。