築城術からみた城郭の塀

摘要

現在、城跡の整備においては、天守建築だけではなく、門や櫓といった建物の復元・整備が増えている。一方で、建築史においてはこれらについての十分な研究蓄積がない状況にあり、特にこうした建築物について「築城術」1)の観点からは十分な議論がなされていない。そこで、筆者は城郭の門・櫓・塀など建築構造物に着目して、近世の一般的な築城術を明らかにすることに取り組hでおり、本稿では城郭の塀を取り上げ、築城術の観点から求められた機能、特徴を明らかにすることを目的とする。そのため、当時の築城術において想定されていた城郭の姿や情報を軍学書2)の記述から取り上げ検討する。そして、現存遺構との比較を各遺構の修理工事報告書を用いて行う。