中小規模高齢者居住施設に適した火災時人命安全計画手法の開発研究: その２ 火災初期の軽量吊戸の気密性に関する実験

摘要

高齢者人口の増加とともに高齢者福祉施設、高齢者向け住宅の整備が求められているが、高齢者の視聴覚・行動能力のもとで安全に生活できる居住施設の整備は立ち遅れている。一方、グループホーム等の高齢者の居住施設で多数の犠牲者を出した火災事例を見ると、いずれも公設消防の到着前に施設内で延焼・煙拡大しており、その段階ですでに施設全体で人命安全に重大な脅威を生じていたと推定される。本研究では、一般に社会福祉施設等に用いられている居室扉の遮煙性能に注目し、火災初期における不燃扉の隙間面積の変化を実験により確認する。火災室において居室扉は、完全に閉鎖することで廊下等の避難経路への漏煙量の削減が期待できる。また、災害時要支援者の避難が遅れた場合、滞在する居室や一時待避場所で公設消防の到着まで籠城せざるを得ない状況も想定でき、その場合、避難者の安全性は居室扉の遮煙性能に大きく依存することになる。一方、扉等の建具の気密性については、常温時の隙間面積の測定データの報告はあるが、火災時、特に火災初期の周囲温度の変化に伴う隙間面積の変化については知見がない。本研究では、老人福祉施設等に採用実績の多い不燃扉を“ルームコーナー試験装置程度の不燃区画”内に置いた火源によって初期火災の中温の煙層を再現して加熱することで、不燃扉の遮煙性能を確認する。