ベトナム・トゥアティエン・フエ省のディンの現況 　ヴィエトナム・フエ阮朝王宮の復原的研究（その199）

摘要

筆者はトゥアティエン・フエ省のディンに注目し，2014 年度より実測調査を進めている．以前より進めてきた宮殿や伝統家屋における設計技術の分析を念頭に，新たに中規模建築であるディンの寸法を収集することで，その不足を補おうという試みである．トゥアティエン・フエ省全域のディンの中で，伝統的且つ優良な技術で建てられたと目される遺構を30 棟程度選抜して実測調査をし，目下その分析を進めている最中である．　本稿では，その選抜に際してトゥアティエン・フエ省全域のディンを踏査する中で得られた知見を整理して報告する．なおディンとはベトナムの村落に於いて守護神を祀り，会合や祝宴の場として用いられてきた伝統的な村落の中心施設で，日本の惣堂・村堂に相当する施設である．これは中部地域に限らず，ベトナム全土に遺構が存在し，特に北部地域のディンに関しては山田幸正らによる一連の調査研究註）がある．