生存分析に基づく住宅内温熱環境と虚弱高齢者の要介護認定との関連

摘要

断熱性能の向上が非居室をはじめとする住宅内の温熱環境改善に寄与することを確認した。また、室温との対応が確認された脱衣所で寒いと感じる頻度を用いてサンプルを分類し、要介護認定される年齢に関する生存分析を実施した。その結果、高得点群は低得点群と比較して要介護認定される年齢が高いことが示された。現在、日本において高齢化に伴う要介護認定者数の増加が問題視されている。日常生活に制限のある「不健康な期間」を含む平均寿命と健康寿命の差は、男性で9.0 歳、女性で12.4 歳文1)である。この差は今後より拡大することが懸念されており、要介護状態にならずに可能な限り自立した日常生活を営むことができるよう、健康寿命を延伸することが求められる。要介護になった原因として最も高い割合を占める循環器疾患文2)は、血圧が高いほど発症リスクが高まるとされる文3)。冬期の室温が低いほど血圧が高くなることが指摘されていることから文4)、良好な温熱環境による介護予防が期待される。特に、外出行動が少ない傾向にある虚弱高齢者文5)において、住宅内温熱環境と要介護状態の関係を明らかにする意義は大きいと考えられるが、その検証は未だ不十分である。そこで本研究では、住宅内温熱環境と要介護状態との関連を明確にするため、実態調査を行った。