高等専門学校の卒業研究を活用した低学年学生へのものづくり教育の効果（第1報：産技高専品川キャンパスでの5inch gauge鉄道模型の改良の試み）

摘要

ものづくりは我が国の基幹であり，高等専門学校（以下，高専と称する）が技術者の育成を通じて高度成長期から今日まで果たしてきた役割は大きい．高専は大学のように理論のみではなく，実践的技術者の育成を実現するため5年間一貫してものづくり体験を重視し，実験·実習·演習の時間を多くした実践的技術教育に理論を肉付けするカリキュラムである．20歳までに大学学部卒と同程度の実力を付けさせるため授業が過密化し，ものづくりや工学に興味がない学生にとっては厳しい内容となっている．1980年代まで高専に入学する学生の多くは，ものづくりや工学に興味があり理数科目の得意な中学生が多かった．しかし，1981年度から2011年度まで導入された中学校でのゆとり教育によって，中学生の基礎学力，特に，理科と数学の著しい低下を招き，中学生の理数科離れを加速させた．これらの影響で高専に入学した中学生の中には高専のカリキュラムに興味が持てず，物理，数学が難しくなる2学年の後期で成績が落ち込み，その後の学校生活が不振に陥ることが原因となって留年や退学者が多くなっていることが問題となっている．