若竹および成竹の竹梓内における動的粘弾性の変動

摘要

竹材は成長の早い循環型資源であるという点で、近頃その有用性が再認識されてきており、木材の代替材に留まらず、維管束鞘部分をガラス繊維の代替材として用いる試みもなされている。 今後も竹材の積極的な利用や様々な用途開発が期待されていることから、竹材の性質についてより詳細に把握する必要がある。 もちろん竹材の組織構造、力学的性質、水分や熱に対する性質など基礎的引性質については既に多くの研究がなされているが、木材などと比較してもその情報は十分であるとは言えない。例えば、竹材の力学的性質と組織構造との関係については、節や管状構造、維管束鞘の分布密度などとの関係は詳細に検討されており、その構造が外力に対して如何に合理的であるかが述べられている。 しかし、細胞壁構造のような微細構造が力学的特性にどのように寄与しているか、という点については未だ検討されていない。 また、組織構造についてはParameswaranらによって詳細に調べられており、繊維細胞の壁構造については繰り返し多層構造のモデルが提唱されているが、力学的特性との関係を論ずるためには、繊維細胞のみならず柔細胞も含め、ミクロフィブリルの配向角度、壁層構造、細胞壁率などについて詳細に数値化することが望ましい。 また、竹材の成長に伴う細胞壁の形成過程における力学的性質の変化を追うことも、その性質を理解する手がかりになると考えられるが、組織学的な研究は進められていても力学的特性との関係は検討されていない。