国有林の新たな管理と地域振興 「木曽悠久の森」の取り組みから

摘要

現在、長野県木曽地方から岐阜県中津川市の一部を含む、いわゆる木曽地域.裏木曽地域の国有林において、天然木曽ヒノキ林等温帯性針葉樹林の保存-復元を目的とする「木曽悠久の森」の取り組みが始まろうとしている。この取り組みは、当地を世界的に稀少となりつつある温帯性針葉樹林がまとまつて残存する極めて重要な地域として位置づけ、一帯の人工林や未立木地も含めて大規模な保全地域に指定し、科学的なアブ口 —チを通じて保存.復元を図ることを目的としている。生物多様性の復元を基本理念とし、数百年先を見据えた超長期的な取り組みが構想されている点で、これまでの国有林管理とは一線を画するものである。同時に、国有林資源に大きく依存してきた木曽地方への社会経済的影響も考慮する必要があり、国有林当局、林業.林産業関係者、関連地方自治体のみならず、多様な分野に関する学識経験者や観光.レク利用有識者、まちづくりの関係者、当地の自然.文化に関心を寄せる人々など、地元を中心とする幅広い連携.協働を必要としている点でも新たなチャレンジであるといえよう.