第3章照明器具および機器

摘要

2013年の日本経済は，安倍政権による経済政策「アベノミクス」効果により景気回復が進み，2020年の東京オリンピック開催が決定したこともあり，継続的な好景気への期待が高まった．東日本大震災の復興工事に東京オリンピック関連工事が加わり建設案件が大幅に増加したが，全国的な建設労働者不足の問題により，多くの建設工事が2014年に持ち越される形となった．2014年以降も2020年に向けて着実な景気回復が期待される．照明器具は，2011年の東日本大震災後の原発稼動停止問題による節電?省エネ意識の高まりによってLED化が急速に進み，2013年は住宅用と店舗用のLED化が成熟期に入り，施設用と屋外用でLED化が加速し，大きく成長した．LEDの普及に伴い，低価格化と省エネ?高効率化がさらに追求された一方で，高付加価値のLED照明器具も多数登場してきている．新たな技術として，無線通信技術を利用したLEDベースライトやダウンライトなどが発売された．これらはタブレット端末による直感的な操作で，照明器具1台ずつを個別に明るさや色温度を変化させることができ，設置後も自由にグルーピング可能でレイアウト変更に柔軟に対応できることから，オフィスや食品スーパーなどでの普及が期待されている．また，店舗用LEDダウンライトにおいて，従来光源のHID並みの高光束帯でありながらLED光源部分が交換可能な器具が発売され，設置後の明るさや光色の変更が可能となった．施設用LEDベースライトにおいても，設置後に明るさや光色を交換可能で，将来高効率化したLEDユニットへの交換も可能な，電源内蔵型LEDユニットを搭載した器具が各社から発売され，市場浸透が急速に進hだ． LED光源一体型の店舗用ダウンライトやスポットライトにおいて，LED光源に集積型LEDを採用した器具が多数発売され，光の質を高めたタイプが今後の主流となりつつある．住宅用LED器具においては，LEDの特長を活かした薄型デザインの小型シーリングやブラケット，ペンダントなどが各社より発売され，デザインバリエーションの充実が進hだ．一方で，特に住宅用LEDシーリングライトやダウンライトの低価格化が急激に進み，従来光源の器具と同等の価格にまでなっており，LED器具の採用が当たり前となった．屋外用LED器具では，環境省の「小規模地方公共団体におけるLED街路灯等導入促進事業」などの補助金制度やリースなどの活用により，街路灯や防犯灯の普及が進hだ．また，停電時に蓄電池による点灯へ自動的に切り替わるLED防犯灯や，ソーラーライトタイプのLED街路灯など，災害時を想定した製品導入が増えてきている．防災照明器具では，建築基準法の規定にまだLEDが含まれておらず，非常灯における非常用光源のLED化は進hでいないため，一般灯用光源にLEDを用い，非常用光源に蛍光灯や八ロゲン電球を使用した非常用照明の拡充が進hだ．新光源として期待される有機ELは，各国の照明器具展示会において，照明器具メーカーの出展社数が増加の傾向にあり，2014年に入って明るさを確保したうえで寿命4万時間を達成したブラケットが発売されるなど，進展が見られた．2014年3月の展示会で，従来のスポットライト照明の機能に映像投影機能を融合させたプロジェクタスポットライトが発表された．小規模なプロジェクションマッピングも可能で，新たな空間演出や商品演出の可能性が広がった． LEDや有機ELなどの新光源は，今後もまだまだ進歩するものと思われ，従来光源では成し得なかった明かり文化の発展を期待するものである．