総論 バイオシミラー医薬品をめぐる考察

摘要

1980年代後半における遺伝子改変技術の実用化と，引き 続く 90年代における分子生物学や遺伝子科学技術の進歩 は，医療と創薬の世界を大きく塗り代えることとなった。前 者はヒト成長ホルモン（ソマトロピン），G-CSF,エポエチン などに代表される。これらは効果的な手段を持っていなかっ た白血球減少症や赤血球減少症に対し，直接血球数を増や し，QOLを向上させる初めての医薬品となった。また，がh 化学療法におけるドース?インテンシティの増大を可能とし， 同時に治療の安全性向上に大きく貢献することとなった。ソ マトロピンはヒトの下垂体から抽出精製されたものを輪人し， 使用する形がスタートであった。その絶対量の不足を厳格な 適応遵守などで補い.分けあうことからの始まっている。そ の後，ソマトロピンが遺伝子改変技術で生産され，ヒト由来 という制約が無くなると同時に，感染リスクが理論的に解消 されたことは記憶に鮮やかである。さらに21世紀に入り，ソ マトロピンにバイオシミラー-製品が登場し，医療上適応があ ると診断された場合，ほぼ制約無く使用できるようになって いる。つい四半世紀前まで，下垂体性低身長に悩む小児が, 成長線閉鎖の前の治療開始を心配そうに待ち望hでいたこと を，今日の姿から想像することは難しい。これらの治療上の 進歩や医療におけるインパクトは’"それ以前”を知る者にとっ て驚異であり続けている。