総論 病原性細菌の制御一基礎研究の最前線から

摘要

抗生物質の発見により，人類の寿命は飛躍的に伸び た。しかしながら，近年，薬が効かない多剤耐性菌の出 現が問題となってきている。セフエム系抗菌薬に耐性を 示す黄色ブドウ球菌であるMRSAや，ほとhどの抗菌薬 が効かない緑膿菌であるMDRPなどの多剤耐性菌は， 臨床において深刻な問題を引き起こしている。これらの 菌による感染症の蔓延は，人類を抗生物質が発見される 前の状況に戻すことになってしまう。従って，病原性細菌 に対する人類の戦いに終わりはない，と言っても過言では ない。最近，G7を始めとする先進諸国の指導者における 会合において，薬剤耐性菌への対処が喫緊の課題である とされ，我が国も耐性菌克服へ向けた様々な取り組みを 推進するという方針が打ち出されている。