積雪、土壌凍結地帯の熱と水の動態を評価する長期モニタリングシステムの開発と今後の研究展開

摘要

北海道の冬は4ヶ月以上の間、雪あるいは土壌凍結に覆われる。 特に道東の大規模畑作。 牧草地帯において，土壌凍結情報すなわち凍結深や凍結期間，融解日を知ること．は早春の農作業討画，耕地の湿害対策，あるいは越冬作物の品種導入の適地判定を行うのに重要である。 しかし，この土壌凍結情報を作成するための実際的な手法は未だ確立されていない。 また、土壌凍結層の存在は積雪期間の融雪水や土壌水分移動に大きな影響を与える因子であり、肥料成分等の土壌中の物質の移動に影響を及ぼすため、地下水や周辺の環境へも影響を与える。 土壌が凍結すると凍結に伴い下層から水分が上昇し、土壌が隆起する凍上の原因になると共に、凍結が発達するこどで土壌中への水の浸透が抑制されるため、春先の融雪水は土壌表面を流去すると考えられる。しかし、積雪。 土壌凍結下の農地の水分移動量の把握が困難であったため、その実態は明らかではなかった。 近年、私たちの研究グループは、先に土壌凍結情報の作成手法の基礎となる一般気象デー夕からの地温、土壌凍結深の推定手法（Hirota et al., 2002)を開発し、さらに積雪、土壌凍結条件下の土壌水分移動の把握と長期モニタリングを可能とする新たな手法を開発した（Iwaa and Hirota, in press。 以下、特に後者の長期モニタリング手法について紹介し、これらの研究成果を核にした平成17年度から始まる予定である新たなプロジェクトについて紹介する。