脚ロボットの適応歩行から複雑系機械工学を考える－京都大学21世紀COEプログラム「動的機能機械システムの数理モデルと設計論－複雑系の科学による機械工学の新たな展開」

摘要

非常に大きな自由度と非線形特性を持ち，環境の影響のもとで動的で多彩な挙動を示す複雑な機械システムを「動的機能機械システム」と呼ぶ．この動的機能機械システムは次のような基本的な性質を持つ．1.複雑で予測不可能な挙動を示すが，その背後には単純な法則性，あるいはその振る舞いを支配する骨格となる構造が存在する．2.環境との相互作用を通して自発的に内部構造を変化させ，環境変化に対して適応する能力を持つ．京都大学21世紀COEプログラム「動的機能機械システムの数理モデルと設計論」では，このような動的機能機械システムの持つ特性と，その特性を通して実現されている機能を理解すること，および動的機能機械システムの持つ性質を使用して我々の役に立つ機能を実現する方法を明らかにすることを目的としている．そしてこのような研究分野を「複雑系機械工学」と呼び，機械システムを「複雑さ」という新たな視点から深く探求し，そこに働く支配法則と制御原理を明らかにすることで「機械システム」の概念を拡張し，新しい機械工学の体系を構築することを目指している．本稿では，本拠点の特徴を簡単に紹介し，これまで筆者らが取り組んできた2脚歩行ロボットの研究を一例として，複雑系機械工学の取り組みについて解説したい．