異なった周波数の超音波を印加したNaCl水溶液中におけるSUS304ステンレス鋼の孔食成長挙動

摘要

ステンレス鋼は表面に不働態皮膜があり一般に耐食性に優れるが，Cl~-を含む水溶液中では孔食やすき間腐食がよく生じる。腐食発生部に生成物が堆積され，加水分解反応に伴ってCl~-やH~+が濃縮し，腐食が加速されることが知られている.ところで，著者らは，SUS304ステンレス鋼に生成した腐食ピットやすき間腐食の局所に超音波を溶液中から印加すると，腐食速度が大幅に抑制できることを明らかにした。これは，超音波印加によって腐食生成物が除去され，ピットやすき間中の溶液に濃縮されたCl~-やH~＋濃度が撹拌によって大幅に減少したためと考えられる。また，超音波振動子から試験片までの印加距離が一定に設定された場合では，振動子の出力が大きいほど孔食成長への抑制効果は顕著になり，同じ出力では印加距離が違うと孔食成長への抑制効果は異なる結果が得られた。しかし，超音波振動子の発振周波数の変化がステンレス鋼の孔食抑制にどのように影響を及ぼすかについては，今のところまだ不明である．そこで本研究では，超音波の振動周波数を数種類に変化させ，さらに種々の印加距離で孔食の成長挙動を調べ，孔食の成長抑制に最適な超音波印加条件およびそのメカニズムについて検討を行った．