豚コレラ清浄性維持確認に求められる豚コレラ診断法について

摘要

平成19年4月1日、我が国は国際獣疫事務局（0IE）の規約により豚コレラ清浄国となった。すなわち、養豚分野に大きな被害をもたらした豚コレラが明治21年の初発生から約120年を経て完全に排除されたこととなる。この「豚コレラ撲滅達成」という日本の家畜衛生史に残る偉業は、弱毒生ワクチンの開発、診断技術の開発、改良、それらの技術を取り入れた日本独自の撲滅計画などが個々に優れているのはもちろん、一連の過程における、生産者、各民間団体、行政機関、研究、検査機閑及びワクチン製造所など関係者が一体となって取り組んできた結果によるものであり、世界的にも高く評価される。そして、豚コレラの撲滅を達成した現在、「豚コレラ防疫史」の新たな章を築き綴らねばならない。「清浄化」は免疫のない高感受性の豚集団の再汚染、拡散のリスクを有していることと表裏一体であり、従って、豚コレラウイルス（CSFV）の侵入と拡散を防止するための迅速かつ円滑な豚コレラ発生予防及びまん延防止措置を継続し、清浄化を維持することが重要となる。豚コレラ清浄化から約1年半経過したが、関係者の不断の努力により野外ウイルスの侵入を許していない。この体制をもって豚コレラ清浄化を継続、維持しなければならない。一方、豚コレラの清浄性の維持確認のための調査において、清浄化が達成された故に表面化した事象がある。すなわち、「豚コレラ抗体陽性を示す午ウイルス性下痢ウイルス（BVDV）に感染した豚の存在」であり、調査を支える家畜衛生関係者から多数報告されている。本件は既に知られた又は予測されたことであるが、日本において実際に存在することが明らかとなった現在、調査における障害、再検査などの付加労力増加、混乱やバイアスなどの要因として無視することはできない。