ニワトリ脛骨軟骨異形成誘発病変における軟骨細胞および軟骨管の微細構造学的観察

摘要

脛骨軟骨異形成（Tbial Dyschondroplasia：TD）は、脛骨近位端の成長板軟骨組織の代謝性疾病である。 本研究では、血管新生阻害作用を有ずるThiramを用いてTDを誘発し、TD病変の微細構造を走査型電子顕微鏡（SEM）および透過型電子顕微鏡（TEM）を用いて観察した。 SEMにて病変の横断面を観察した結果、正常脛骨と比較して軟骨管の数は少なく、管腔は小さく萎縮するかあるいは閉塞し、管艦内部には毛細血管もみられなかった。 正常な脛骨の軟骨管周囲では、破骨細胞による石灰化軟骨基質の吸収が認められたが、病変の軟骨管ではみられなかった。 TEM観察の結果、正常脛骨では細胞小器官が乏しく核の膨化した一般にみられる肥大軟骨細胞が観察されたが、TD病変では、細胞および核の凝縮、細胞小器官の破壊、細胞自身消失などの細胞の変性を伴う細胞死の様相を示した。 以上より、TD病変では軟骨管は閉塞し、その機能が阻害されたため、軟骨組織の代謝活性が低下し、軟骨細胞が死に至ることが示唆された。 死んだ細胞周囲の軟骨基質は石灰化を起こさないため、破骨細胞による吸収も行われず、また、血管より破骨細胞および骨芽細胞となる前駆細胞の供給もなされないため、軟骨内骨化が行われることなく病変が発生すると推測される。