トマト属の近縁野生種，Lycopersicon (Solanum）pennelliiの外部形態に関する特件評価

摘要

トマトの近縁野生種，L. (S) pennelliiの41系統を，1996年から9年間にわたり栽培て，複葉，花，および果実の特性を調査し，栽培種に導入するための有用形質を見いすための基礎資料を得ようと試みた．その結果，生育中庸な複葉1枚当たりの小葉数は5枚，7枚，および9枚を着生することが認められ，小葉数が5枚の系統は6系統，7枚の統は11系統，9枚の系統は5系統であった．系統間内の株問および葉位における小葉数は差が認められなかったので，複葉における′ト葉数は系統を識別するための重要な素の一つであると考えられた．複葉の形は，小葉の間隔と小葉先端の形状から系統によって4つのタイプに分類することが可能あった．　 小葉における腺毛の有無についてみると，すべての系統で粘性のある腺毛していた．腺毛の長さが1．Omm以上の系統（LA751，LA1356，LA1657，LA1724，LA1733，A194）は，コナジラミ類あるいはハモグリバエなどに対する抵抗性を持つものと推測れ，腺毛密度の効果などその作用メカニズムについてはさらに調査を加えていく必要ある．花房は全ての系統で禎花房であり，花冠の裂片の先端部は，すべての系統でり返っていたが，最も反り返りが強い系統から弱い系統まで変異が認められた．雄ずはすべての系統において，黄色を呈していたが．LA1941，LA1942，LA1943，およびLA293では基部が紫色であった．全ての系統で，前の先端部に花粉が放出される荊孔が存していた．この特徴は，ナス属に認められ形質であった．ほとんどの系統において，ずいが雄ずいの先端部から露出していた．の程度には系統間差が認められ，その程度のもっとも大きい系統は約3．Ommであった，LA2580，LA2657の2系統は，雌ずいは雄ずいからほとんど露出していなかった．また」雄ずいから露出した雌ずいが屈曲する統と，屈曲しない系統が認められ，その程にも系統間差が認められた．花柄における離層の位置は，ほとんど系統でその基部に認められたが，花柄の中部に位置している系統もあった．Correll（1958）によると，ナス属（Solanum）の部分の種が，花柄における離層の形成部位が基部に位置することから，本種をナス属（Solanum）に分類しているが，本研究によって離層の位置は花柄の長さの中間部に置する系統が見いだされたので，花柄におる離層の位置によってナス属か，トマト属かに分類することは難しいと考えられた．成熟果実は薄緑色から濃緑色であり．糖度はBrix示度で10以上の高い値を示す系統がLA199，LA1649，LA1733およびLA2560で認められた. 以上の結果から，本種は栽培種のトマトの品種改良において，耐虫性や高糖トマトの育成に当たって本種は有用な形質を保有していること，その程度は系統によて大きな差があることが明らかになったの，本種を用いて品種改良を行う場合には育目的にもっとも適した形質を有する系統を選んで行う必要がある．