電気防食により生成するエレクトロコーティングの解析

摘要

電気防食は，海洋という厳しい腐食環境に曝される鋼構造物の防食に極めて有効な方法である．海洋鋼構造物が設置される環境は，飛沫帯，干満帯，海水中，海底土中に分けられる．電気防食は，このうち常時電流が流入する海水中，海底土中に有効な防食方法である．海洋鋼構造物に電気防食を適用した場合，海水中の他に干満帯にもエレクトロコーティングが生成する．大気と接する水中では水酸化マグネシウムよりも塩基性炭酸マグネシウムの方が安定であることが報告されており，エレクトロコーティングに含まれる水酸化マグネシウムから塩基性炭酸マグネシウムが生成する可能性がある．特に，干満帯は大気中に露出する時間があるので，水酸化マグネシウムの炭酸化反応が起こりやすいと推測される．しかし，これまで干満帯で生成したエレクトロコーティングに含まれる水酸化マグネシウムの炭酸化について調査されたことが無い．また，大気と接する水中で生成する塩基性炭酸マグネシウムについての報告が少ない．そこで，水酸化マグネシウムと空気中の炭酸ガスを反応させる炭酸化反応に関する基礎試験を行った．そして，電気防食された試験体を用いた暴露試験を行い，干満帯で生成したエレクトロコーティングに含まれる化合物や化学組成，性状を調査した．