「漆百科」

摘要

漆は漆の木から採取されるウルシオールを主成分とする液体状の物質で，日本人は9000年以上前からこれを接着剤や塗料として利用している。 漆が乾燥して生成される膜は酸·アルカリに強いだけでなく耐熱，耐湿，抗菌などの働きがあり，自然の作りだした最高の塗料であってその耐久性には並外れたものがある。 また，漆は太陽光をエネルギーにして漆樹が空気と水を原料に生産したバイオマスで，漆が乾燥する化学反応も常温·常圧でおこなわれるため必要なエネルギー消費量はゼロであり，環境に負荷を与える汚染物質の排出もほとhどない環境にやさしい稀有な塗料である。 このような漆にほれ込hだ著者が，漆についての解説，縄文時代から現代の漆器産業までの漆の歴史，伝統工芸漆器について述べたのが本書であり，テーマごとに完結した短文でまとめられているので，大変読みやすく漆について知るのには勧められる本である。