イノベーションの基礎と工学·材料分野の事例 第5回「日本におけるイノべーション： 現状の分析と課題」

摘要

これまで，イノベーションの定義や分類について，実例を紹介しつつ学術的基礎に立ち返つて紹介してきた。流行り言葉としてのみ理解していた読者がいたとして，その本 来的な意味と，世界に先駆けて超スマート社会(Society 5.0) を実現するために求められている破壊的イノベーションがどのようなものであるか，明確に理解し，思い描く一助となつたと期待する。市場に投入され,現在流通している技術ゃサービスがどのようなイノベーションであるか定義したり分類したりすることが困難である，もしくはするべきではないこと は，本連載の第3回目においてクリステンセンによるiPhone に関する推論の事例で紹介した。社会を変えたかどうかは， 過去のものとなって初めてわかるものであり，市場に流通する製品は歴史の評価を待つ段階と認識すべきだろう。