ローカルな森林資源管理政策の形成 －インドネシア国ハリムンーサラク山国立公園の事例－

摘要

インドネシア国ジャワ島西部に位置するハリムンーサラク山国立公園は，総面積113，357haのうち，現在，約6万haが天然林に覆われている1。過去18年間の平均天然林減少率は約1．6％で，近年も，年間1％前後の割合で天然林減少が進行してきた2。国立公園を管轄する林業省の現地管理事務所は，ブローカーによる木材伐採および伐採跡地における農地開拓という一連の過程によって天然林が減少してきたと捉えている。　国立公園領域内に位置する集落は300を越え，居住人口は約10万人である。彼らの生業は農業が中心で，濯概水田での水稲二期作，畑地での唐辛子、トマト、豆栽培といった営みが広範に観察される。地域によっては，センゴンや丁子などの樹種が換金目的で植栽されている。彼らの畑地や植林地は，その少なからぬ部分が天然林伐採後に造成したものであり，現在の国立公園所長は，ハリムンーサラク山域の天然林保全に際しては集落住民との協働が不可欠であると表明している2。また，2004年から5年間にわたって本国立公園で実施されたJICAの技術協力プロジェクト「グヌンハリムン国立公園管理計画」においても，住民との協働管理がパイロット活動として推進されてきた。