熱帯泥炭湿地における泥炭火災とそれにともなう地球環境問題

摘要

1997年は熱帯泥炭地とその上に成立する森林にとって大変な災厄年であった。20世紀最大とも言われた1997／98年のエルニーニョ現象は，東南アジア各地に例年より長く厳しい乾季をもたらしたが，この長い乾季により熱帯泥炭林では地下水位が急激に低下し，それとともに表層泥炭の水分含量も減少した。泥炭地はもともと地下水位が高く地表近くが常に湿潤な状態でヲ　植物が枯死した後に末分解のまま植物遺体が堆積した土地である。その泥炭地は湿潤のままであれば草木の生長と枯死の繰り返しが続き，泥炭の堆積が続けられる。しかし9　その泥炭地の水バランスが何らかの理由で崩れ9　乾燥化すると膨大な可燃物，すなわち燃料が地上に出現する。北海道の石狩泥炭地では昭和30年代ころまで多くの農家が泥炭を燃料として使用していたし，アイルランドでは現在でも泥炭を燃料とする火力発電所が稼動していることからも，立派な燃料あることに間違いない。