最近のATC/ATS技術の潮流

摘要

昨年12月1日に開業した東北新幹線（盛岡·八戸問）には，「車上主体形」と称する新たな自動列車制御装置（Automatic Train Control: ATC）（DS-ATC: Digital Shinkansen-ATC）を設備した．これまでの新幹線のATC装置は，走行許容速度情報をATC地上装置からATC車上装置に伝送し，列車速度を多段に自動制御する方式であった．新たなATC装置（DS-ATC）では，列車が停止すべき軌道回路名等を伝送し，車上にデータベース化して保持している走行曲線を選択して，走行曲線と自列車位置から走行許容速度を得て，自列車速度を連続的に速度照査する方式により，一段制御の方式が実現した．この方式は，地上装置では先行列車の位置等の情報を車上に伝送する機能しか持たず，車上装置側で走行許容速度を判断する論理を持つことから，「車上主体形」ATC方式と呼ばれている．また，本年末の工事完了を目指して建設を進めている九州新幹線（新八代·西鹿児島間）でも，DS-ATCとは異なった「車上主体形」のATC方式を導入すべく工事を進めている．近年，ATC/ATS（自動列車停止装置；Automatic Train Stop）方式をより高機能な方式の開発が行われるとともに，将来的にさらに高度な運転·信号方式の研究開発が多方面で進められている．本稿では，ATC/ATSの基本的考え方を説明し，最近実用化されつつある新幹線および在来線でのATC/ATSの方式と，今後の技術開発の動向について述べる．